Journal

Stories, ideas, and field notes from T2.

Inside the Design

— The thinking behind T2 gear

Text by Saori Hase
Illustration by Heisuke Kitazawa

『Inside the Design』は、ファッションの現場に長く身を置くことで
独自のデザインへの視点を培い、自身もウルトラランナーであるライターの長谷智織が、
『Tabisuke Tabizo』のプロダクトをデザインの視点から読み解く連載コンテンツです。
“最適なフィッティング”を追求する『Tabisuke Tabizo』のテック開発とパターン設計,
素材とカラーの選定や縫製方法の採用に至るまで、
北鎌倉のアトリエで行われるデザインの“Inside=内側”をプロダクトを通して紹介します。
Episode 1のChapter 2では、『T2 Ultra Belt』のフィッテイングの“Inside”を紐解きます。

『Inside the Design』は、ファッションの現場に長く身を置くことで独自のデザインへの視点を培い、自身もウルトラランナーであるライターの長谷智織が、『Tabisuke Tabizo』のプロダクトをデザインの視点から読み解く連載コンテンツです。
“最適なフィッティング”を追求する『Tabisuke Tabizo』のテック開発とパターン設計、素材とカラーの選定や縫製方法の採用に至るまで、北鎌倉のアトリエで行われるデザインの“Inside=内側”をプロダクトを通して紹介します。
Episode 1のChapter 2では、『T2 Ultra Belt』のフィッテイングの“Inside”を紐解きます。


Episode 1

T2 Ultra Belt

Chapter 2: フィッティング

7つのサイズ

2026 年、春のある日。
私は呼吸することも忘れて、握りしめたカッターは、右手と一体化するほどに集中していた。
そうアトリエでの今日の作業は、いよいよ生産がスタートする『T2 Ultra Belt』の型紙作りである。
この作業の精度によって製品の仕上がりに大きく影響する、その緊張に負けないように。

その切り出す型紙は、XXSからXXLまで7 サイズ。
切り出した手元の型紙を見比べると、子供と大人ほどのサイズ差に笑いすらこぼれてしまう。

今回は前回紹介した「『T2 Ultra 10』の XS サイズ」を起点とした『T2 Ultra Belt』の開発、そのなかでも核になる「フィッティング」に関してのお話しです。

ランニングベルトの多くはフリーサイズ、もしくは2〜3サイズで展開されている。
またその構造も着脱式や、輪になった腹巻き状のものが主流だ。
サイズ展開やデザインも均質化が進む潮流のなか、『T2 Ultra Belt』では「フィッティング」そのものを設計の核に据え、新しいランニングベルトのあり方を模索していった。

開発の核『フィッティング』

フィッティングを構成する要素は大きく

・サイズ
・ファブリックの伸縮性とキックバック力
・アジャスター

が挙げられる。

まずは「サイズ」について。

『Tabisuke Tabizo』のプロダクトは日本国内だけでなく、北鎌倉の小さなアトリエから海を渡り、北米やヨーロッパをはじめとするさまざまな国へ届けられている。
そのためサイズ設計はアジア人から欧米人のランナーまでカバーする「XS 〜 XLサイズ」のワイドレンジとなる。
だが『T2 Ultra Belt』はそれらに加え、より大柄な欧米人に対応する「XXLサイズ」、そして特に小柄な女性ランナー向けの「XXSサイズ」が用意されている。

「え? 5サイズでなく、7サイズ展開なんですか?」

私は驚きのあまり、思わず聞き返した。ランニングベルトとしては異例とも言えるサイズ数だったからだ。

アジャスターだけではなく、サイズそのものでも細かなフィッティングを実現するため、ピッチの見直しなど試行錯誤を重ねた。その結果、『T2 Ultra Belt』はXXSからXXLまでをカバーする7サイズ展開となった。

横方向に伸びる
ファブリック

『T2 Ultra Belt』は水分とスマートフォンを同時に収納でき、トレイルでもトラックでも、あるいはマラソンでも使えることを前提に企画されている。

前回触れた通りモックアップは、『T2 Ultra 10』に使用されている『4WAY ストレッチ』で進められたが、快適な装着感が得られる一方で、ソフトフラスクを収納すると生地が荷物を巻き込むように変形し、揺れも十分に抑えることができなかった。

パワーメッシュや布帛などさまざまな素材を試したものの、なかなか理想には至らない。
そんななかでたどり着いたのが医療用サポーターやコルセットなどに用いられる、伸縮性と固定力を併せ持つナイロンストレッチ素材だった。

横方向に伸び、縦方向はほとんど伸びない。
その特性は開発当初から課題だった「揺れないこと」に対するひとつの答えでもあった。

この素材で製作した試作品は、アンバサダーである長尾暁人さんにより繰り返しテストされた。
酷暑の『KAGASPA Trail Endurance100 by UTMB』や雨天の『北九州・平尾台トレイルランニングレース』、そしてオーストラリアで開催された『Ultra-Trail Australia by UTMB』など、レース本番や日々のトレーニングにおいて、検証は重ねられていった。
さらに日常生活でも長時間着用し、素肌への着用テストや負荷をかけた状態での検証を繰り返したそうだ。

「走る」以外の時間にも着目しながら、わずかな違和感や感覚の変化をも探り続けたその積み重ねが、製品の完成度を高めていった。
そうして、信頼の厚い長尾さんから発せられた渾身の合格の言葉を受け、『T2 Ultra Belt』のメインファブリックとして採用されることとなる。

次回は開発の核となるフィッティングの最後の要素、「アジャスター」について紐解いていきたい。

長谷智織

はせ・さおり。兵庫県神戸市出身、神奈川県藤沢市在住。
サーフィンとハイキング、そしてセレクトショップ販売員として培ったフットワークの軽さと好奇心は、2019年の関東転勤を機にトレイルランニングへと向かう。その年、会社の先輩に誘われ出場した『Madarao Forest Trails』をきっかけに、山を走る魅力に惹かれ、2022年にさらなるウェルネスな暮らしを求めてアパレル企業を退社。人生で一度はという思いで挑んだ『Mt.FUJI 100』を経て、ウルトラディスタンスの世界へと歩みを進める。
「迷ったら楽しい方」をモットーに、好奇心の赴くまま各地のコミュニティや人とのつながりを広げながら、100マイルレースへの挑戦とともに自分らしいペースで日々を重ねている。
人気のトレイルランニング系ポッドキャスト『さかみち』の二代目パーソナリティとしても活躍中。

Instagram

長谷智織

はせ・さおり。兵庫県神戸市出身、神奈川県藤沢市在住。
サーフィンとハイキング、そしてセレクトショップ販売員として培ったフットワークの軽さと好奇心は、2019年の関東転勤を機にトレイルランニングへと向かう。その年、会社の先輩に誘われ出場した『Madarao Forest Trails』をきっかけに、山を走る魅力に惹かれ、2022年にさらなるウェルネスな暮らしを求めてアパレル企業を退社。人生で一度はという思いで挑んだ『Mt.FUJI 100』を経て、ウルトラディスタンスの世界へと歩みを進める。
「迷ったら楽しい方」をモットーに、好奇心の赴くまま各地のコミュニティや人とのつながりを広げながら、100マイルレースへの挑戦とともに自分らしいペースで日々を重ねている。
人気のトレイルランニング系ポッドキャスト『さかみち』の二代目パーソナリティとしても活躍中。

Instagram

北澤平祐

きたざわ・へいすけ。イラストレーター、作家。横浜市生まれ。川崎市在住。
アメリカに16年間在住後、帰国、イラストレーターとしての活動を開始。書籍の装画や、洋菓子フランセのパッケージ、アフタヌーンティー、サンリオとのプロダクト、ココスのメニューなど幅広い分野でイラストを提供。2026年『ユニコーンレターストーリー』(集英社/ホーム社)で、第41回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『しおりとめくり 北澤平祐作品集』(PIE)、『ゆかいようかいノート』(小学館)、『ひげがながすぎるねこ』(講談社)、『ルッコラのちいさなさがしものやさん』(白泉社)などがある。

Instagram
Official website: www.hypehopewonderland.com

北澤平祐

きたざわ・へいすけ。イラストレーター、作家。横浜市生まれ。川崎市在住。
アメリカに16年間在住後、帰国、イラストレーターとしての活動を開始。書籍の装画や、洋菓子フランセのパッケージ、アフタヌーンティー、サンリオとのプロダクト、ココスのメニューなど幅広い分野でイラストを提供。2026年『ユニコーンレターストーリー』(集英社/ホーム社)で、第41回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『しおりとめくり 北澤平祐作品集』(PIE)、『ゆかいようかいノート』(小学館)、『ひげがながすぎるねこ』(講談社)、『ルッコラのちいさなさがしものやさん』(白泉社)などがある。

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